葦は手折られない

日本のどこかで息づく女 ダイエットのこと、思うこと

普通に食べられない

私が大学時代を通じて、200回は検索窓に打ち込んだ言葉だ。

 

 

食べるのが怖い

拒食 治す

過食 治す

拒食 過食

食べたくない  食べたい

拒食症 食べる 太る

過食 吐けない 吐かない

 

もうお前それは誘導尋問やろ...としか思えない検索履歴である。本人も分かっている。それでも毎日毎日、ありもしない救いを求めて情報を受け取り続けた。

誰も助けてくれないのは知っていた。せいぜいが、私は治ったから貴女も治るよ死なないで、なんてどこかの知らないお姉さんになだめすかしてもらえるくらいだった。それでも、救いだった。

 

 

拒食、チューイング、非嘔吐過食。体重は20kg以上一年で増減した。

過食嘔吐以外は一通りやった。吐くことだけはできなかったし、それだけは本当に身体を壊すからやらないで、と摂食仲間のお姉さんに固く止められたから。

 

摂食障害の何が辛いって、頭の中の占拠率がエグい。本当に毎日の生活が文字通りタベモノの奴隷。何をいつどれだけ食べたら太らないのか、常にタベモノ様のご機嫌をとり、カロリーは敵、体重は成績より重い評価基準になり、誰でもない自分に全否定される感覚。食事が楽しいなんてみんな正気か?って感じ。

食べているのを見られたくなくて、毎日トイレに隠れて歪なお弁当を口に詰め込んだ。揚げ物は噛んで吐き出して流した。死んだ目で大量のお菓子を口に押し込んだ。泣きながら壁を蹴った。過食したらお腹が痛くて気持ち悪くて、講義にも行けずに90分泣き続けた。

 

 

原因は何となくしか分からない。

部活と受験のストレスで痩せたら褒められたから、もっと痩せようと思った。そしたら強迫観念が止まらなくなった。それだけ。珍しくもないと思う。

母親が絡んだり、兄弟や友達と比べられたり、何かしら心に穴があって、それを埋めたくて、みたいな子も沢山いる。そうじゃない子も沢山いる。原因は何であれ、みんな同様に苦しんでいる。「普通に食べられない」ということに。

 

 

結論から言えば、私は今、ほぼ寛解状態。

完全に脱したと思えている人、感覚は残ってるけど気にせず生きられるようになった人、摂食障害ごと受け止めて健康には生きられるように気をつけている人、いろいろいる。

 

本音を言えば食べずに痩せていたい。食べないって摂食障害者にとってほとんど唯一解の絶対的な理想だから。

自分は今欲望に打ち勝って、

自分に打ち勝って、

罰されながら、

他の人がやれないことを成し遂げている、

護られなきゃ消えてしまうよというSOSを体をもって表現している、

あの子に勝っている、

その高揚感は手放しがたい。

 

 

宗教みたいなもんだよ、摂食障害って。

 

 

悩んでることの根幹に、解決策みたいな顔して居座られたら、躍起になるに決まってる。甘い顔して、仲間がいるぜって引き摺り込んで、あとは体がどうなろうと自己責任。

 

 

ほんとにその問題の根幹はそこにあるの?

痩せたら全て解決するの?

自分に問う思考力も奪われて、思考停止して、痩せれば、食べ物を詰め込めば、それさえしてればいいんだよって。

 

 

お前が何をしてくれた?

 

 

摂食障害に殺される人、殺されそうでもう何も分からなくなって諦めたくなっている人、居ると思う。私もまだ時々そうなる。

 

でもね

摂食障害って宗教みたいなもんなんだ。

だから無敵じゃないんだ。

大きな悪魔みたいに見えてるだけ。

あなたがあなたによって立つことができれば、何も怖くない。

越え方が分かれば、困難は怖くなくなる。

たとえ困難そのものがなくならなくても。

 

趣味でも、勉強でも、仕事でも、日々の小さな幸せ、何でもいい。悪魔を無視できるくらい、あなたを惹きつけるものを見つけて。

 

過去に数え切れないくらい何度も、どうしたら摂食障害治るんだって泣き喚いたけど、自分で自分のこと分かるまで間違ってその度に乗り越えるしかないよ。

完璧なんてありえない。生身の人間は機械みたいに条件揃えれば希望通りに数字を管理できるなんてこと、ない。

 

宗教は弱い人間の思考停止のために作り上げられた麻薬だから。

自分で考えることができる人間になるしかないんだよ。

病気に依らずに、自分でいること。

それはある意味病気という特別に守られていた存在から、「何者でもない」という世界に身を投機すること。

怖いよ。

病気でも、宗教でもいいから守られていればよかったって何度も思うよ。

でも大丈夫。

一度越えた経験を持ってみる。今日はごはん楽しかったって。一日でいい。また戻ってしまってもいい。一度越え方が分かったら、困難は怖くないから。縛られてた悪魔はちっぽけだったって、振り返ってみたら初めて分かるから。