娘が摂食障害になったら
摂食障害カテゴリのブログを読んでいると、意外と当事者だけでなく、親御さんの立場からの声も多く見られる。
「何も話してくれない」「なんとか無茶食いをやめてほしい/ごはんを食べてほしい」「大幅に変わった体型や大量のゴミを見て心配になる」...
ああ、申し訳ないな、という気持ちになる。
私は当事者、娘としての立場だ。
こんな時、親はどうするのがいいんだろう?そう、悩んで下さる親御さんの、なんと少なく、有難いことか。
親が変わらなきゃいけないパターンほど、親は子供のせいにする。逆も然りだ。
●原因と、心の中
●覚えておいてほしいこと
●どうしてほしいのか
この3点について、私の知る限りのこと、考えることを、述べさせていただければと思う。
●原因と、心の中
・(性的)虐待やネグレクト
・何気ない傷ついた一言
・登校の強制
・いじめられていることへの無理解
・きょうだい親戚との比較やえこひいき(外見に限らず、成績や性格の比較も原因になる)
家族が原因となる場合で多いのはこんな原因だ。もちろん他にも色々。
SOSの表現だったり、ゆるやかな自殺・自傷だったり、つかの間の逃避だったり、心のバランスだったり、一人ひとりにとって摂食障害は何らかの意味を持つ。ただ、それを当事者自身が言語化できているとは限らない。習慣と化してしまうともう、ますます分からなくなる。「自分は普通じゃない」「ダメ人間だ」という焦りばかり募って、なぜそうなったのか、本当に、どんなに考え尽くして悩み尽くしても、分からなくなる。
大袈裟でなく、一日じゅう一人ぼっちで、闘い続けているような状態なのだ。
血糖値の乱れ、自己否定、自己嫌悪、いつも心は荒れ狂っていて眠れない。眠るか食べるほかに逃げ場もない。ただ寝たり食べたり泣いたりしているわけじゃない。
生きるので、精いっぱいなのだ。
●覚悟しておいてほしいこと
本題の前に少々物騒なカテゴリを置くのも何だが、私の知る限りで、「これは親御さんに知っていてほしい」ということをここにまとめられればと思う。
○摂食障害は甘えじゃない。完治するとも限らない、長期戦。
食べなかったのが食べるようになったから、低体重じゃなくなったから、過食のゴミが出なくなったから、ああ良かった、というものでもない。食べ物や見た目へのこだわり、縛りは、ずっとずっと脳にこびりつく。かなり長い間、ほぼ一生かけて向き合う敵だ。
こころの風邪でも甘えでもない。本人が弱いからなるじゃない。人一倍頑張り尽くして、それでも、もう立ち行かなくなって、症状として現れているのだ。
○無月経、鬱の併発など、身体に及ぼす影響は大きい。入院の可能性もある。
特に女性の場合、体重があまりに減ったり増えたりすると、月経不順をはじめとして様々なリスクがある。お子さん本人も調べて知っているかと思うが、親御さんも覚悟というか、知識として持っておいてほしい。
精神科やカウンセラーにかかる必要がある場合もあるけど、無理に引きずって行ったり、行きたくない様子を隠さざるを得ないような期待した態度を見せたりというのは、くれぐれもやめてほしい。
精神科にかかるなんて恥ずかしい、親戚に顔向けできないじゃないか、とかは論外。割といるけど。
もうすでに不安で溺れそうなのに、最後に縋れる身内にまで追い討ちかけられたら、あっけなく親御さんへの我々の信頼はマイナスになるから。取り返しつかないよ。
○死にそうなほど神経質になっている。
「昔はこんなきつい物言いしなかったのに」と、お母様が嘆いているのを時折見かける。「親に怒鳴ってしまった。情けない。悪いのは私なのに」と泣いている子の声も聞く。
お子さんの優しさとか、我慢とかそういうのを超えたストレスがあるからこそ摂食障害になってるのに、それをお子さんのせいにするのは違う。これは、声を大にして言う。
これは同時に、あなたの子育てが間違ってたわけでは決してない、という事でもある。
●どうしてほしいのか
そんな中で、親御さんに我々はどうしてほしいか。
①親のヘルプ、親自身の変化が必要な場合
親との触れ合いや対話を必要としている場合もある。その時は、どうか拒絶しないでほしい。味方でいてくれて、責めないでいてくれて、生きていていいと言ってくれる。それだけで、我々は闘える。
もし、甘えだと突き放してきたのなら、遅くないから今すぐ謝って、改めて。お願い。
転校したいとか、環境を変えたいという声は、必死に勇気を振り絞った結果だから、どうか可能な限り検討してあげてほしい。心身の健康を犠牲にしてもついに耐えられなかった環境に、根性論で再び放り込むなんてことはしないであげてほしい。
ガマンにガマンを重ねたひと(長女さんに多い)の場合は、お母さんに対して多少赤ちゃん返りしてしまうかも。それでも、それが今は必要なのだ。いつまでもは続かないから、どうか手遅れになる前に、甘えるのを今は許してあげてほしい。
今まで我慢してきた分なのだ。この歳にもなって甘えるな、なんてことは、決して言わないで。
②そうでない場合
これはもう、ひたすらに、「放っておいてほしい」。
もう少し親御さんに親切に言うと、「食べものにも体型にも絶対に触れないで、腫れ物扱いしないでほしい」という意味だ。
大量のゴミ、異臭のするトイレ、過食に圧迫される家計、食べ物の1グラムにすら執着されるストレス、神経質なふるまい、大きく変わった体型。我々が色々隠すから、よけいに心配なのは、分かっている。我々も痛いほど分かっている。申し訳なさでよけいに死にたくなっている。
自分の中での戦いで精いっぱいで、もうどうしようもなく親御さんに甘えているのだ。今はこれが精いっぱいなんだと。迷惑心配いっぱいかけてごめんなさいごめんなさい、毎日泣いている。
ただ、淡々と生活していてほしい。気晴らしに買い物か散歩に誘ってみて、行くと言われたら行ってあげてほしい。外出しても食べるものやタイミングは、あなたの好きにしていいよと言って。(←ここ事前に伝えてもらえると、安心感が桁違い)
お父さん(お母さん)も大変なんだよとか、食べものにお金が飛ぶからお仕事増やしたんだよとか、そんな本音は、こちらのワガママでマジ心の底から申し訳ないの極みだが、お子さんには言わないであげて。分かってるんだ、子どもは親が思うより、親の苦労を分かってる。
お子さんが吐いていそうなら、歯だけは磨いてねとか、ゴミは袋に入れておいてくれたら見ないで捨てておくからねとか、食べたいものは言ってくれたら作るからねとか、簡単な約束だけ決めておいてくれるとさらにありがたい。神。
間違っても、食べ物のゴミをお子さんの目の前に並べて見せたり、(拒食から食べるようになった人に)食べて偉いねとか健康的になったじゃないって言ったりとか、そんなことはしないようにお願いします。いっぱいいっぱいの心は簡単に死にます。
干渉はしないけど、無関心じゃないんだよってこと。それが、言葉なしに伝わったら、我々はそれがなによりも有難いから。
こんなものかなあ。
もちろん、一人ひとり抱えてる問題も、家族にしか通じない色々な事情もあるから、これはほんの参考。
お子さんのために、心を痛めてくださる親御さんへ。
親御さんにどうしてほしいか分からなくなった、仲間へ。